シナリオプランニングの"難しさ"との向き合い方【Stylish Ideaメールマガジン vol.304】
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シナリオプランニング、あるいは未来創造ダイアローグをやっていると、ほぼ必ずと言って良いほど、どこかのタイミングで少なくともお一人から「難しい」というフィードバックをいただくことがあります。
元も子もない言い方をすれば、未来を考えるというのは難しいことなんです。難しいからこそ時間をかけて取り組む必要がありますし、難しいからこそ、こういうことにしっかり取り組んでいる組織が、長い目で見て他との差別化ができていく。
とはいえ、実際に目の前で「難しさ」に直面している人からすれば、そんな説教じみたことを聞かされたところで難しいものが簡単になるわけではないので、いい迷惑です。
ですので、当たり前すぎる説教じみたことは一度置いておいて、私自身もシナリオプランニングを学び始めたときに直面したこの「難しさ」に、どう向き合うのかを考えていきましょう。
「難しい」という言葉が発せられるとき
私自身がシナリオプランニングを学び始めたときもそうでしたし、今でも初めての手法などに取り組むとき、この「難しい」という漠然とした言葉を口にすることがあります。
このような時にほとんど無意識のうちに発する「難しい」という言葉は、シナリオプランニングなどの手法に内在する難しさを表しているというよりは、慣れない手法をうまく扱えていない自分の混乱を表しているように思います。
日本で教育を受けてきた人であれば、何かの演習のようなものを与えられた場合、そこに唯一の答えがあり、その答えにたどりつくための明快な方法があるという前提がありました。
そういう人にとって、シナリオプランニングや未来創造ダイアローグで求められる「どんな答えを出しても良く、それが正解かどうかは誰もわからない」「その答えを出す道筋は指針ようなゆるやかなものはあるが、明快な筋道はない」という前提に戸惑うのかもしれません。
少なくとも、私が最初に学び始めた頃は、こういう前提に心もとない印象を持ちました。
今の組織に求められている思考様式
この状況を、例えば組織の中で行われている研修という枠組みの中での出来事ととらえると、たしかに違和感あるものかもしれません。しかし、私たちが日々置かれている現実のビジネス環境という枠組みで、この感覚をとらえてみると、むしろ、この
- 「どんな答えを出しても良く、それが正解かどうかは誰もわからない」
- 「その答えを出す道筋は指針ようなゆるやかなものはあるが、明快な筋道はない」
という前提は、当たり前のものだと言えるのではないでしょうか。
このように私たちが慣れ親しんできた思考様式と、今、求められる思考様式を比べてみると、学び始めた頃に「難しい」と思ってしまうのは、なんら悪いことではなく、思考様式を変えていくための入口に立った合図だととらえることもできるのかもしれません。
「難しい」の向こう側をのぞきにいく
というようなことを結論にしてしまうと、冒頭でご紹介したような説教じみた内容と大して変わらない話で終わりそうです。
もう一歩踏み込んで、では、そうやって出てくる「難しい」という言葉は、上で書いたような心理的な側面だけによるものなのでしょうか。
それを超えた先でなお感じる「難しい」という感覚の裏には、私たちが学ばなければいけないポイントが隠れている場合が多いです。
例えば「気候変動対策」というキーワードを聞くと、最初は、そんなの知っていると思う人は少なくないでしょう。
では「気候変動対策が進んだ10年後の日本はどんな状況になっているのか?産業はどう変わっているのか?私たちの日常生活は?」と問われると、そこまで考えが及んでいなくて発せられた「難しい」という言葉があるかもしれません。
あるいは、検討している未来において、自社のプロダクトを使ってくれている直接の顧客への影響までは考えられるものの、その顧客が受けた影響によって、最終顧客(例えば消費者)がどのように変わるのかというところまでは想像が及ばずに出た「難しい」という言葉もあるでしょう。
もしくは、「こんな未来が実現してしまったら、自分が担当しているプロダクトの意義がなくなってしまうじゃないか…」という可能性に気づき、思わず出てきた「難しい」という言葉かもしれません。
総じて言えるのは「難しい」という言葉は、シナリオを考えていく過程で何かしらネガティブな状況に直面している場合に出てくるもの。
そうだとすれば、その「難しい」を「いやぁ、難しいなぁ」と繰り返し続ける代わりに、いま自分が思わず発した「難しい」という言葉は、何に反応して出てきたものだろうか?と自問してみるのはどうでしょうか。
もちろん、ワークショップや研修の場で、ファシリテーターや講師がいれば、その「難しい」の向こう側にあるものを一緒に解き明かしてくれるかもしれません。
そういう助け船を出してくれる人がいない場合でも、「これは何に反応して出てきたものだろうか?」と問うてみることで、すぐに答えは出なくとも、不確実な未来を乗り切っていくためのヒントが見つかるかもしれません。
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