【コラム更新】本当に不確実な時期のシナリオプランニング
想像以上の大きな揺らぎの中で

このコラムを書いている2025年4月は、アメリカによる関税に世界中が振り回されているような状況です。国や企業はもちろん、個人の投資家の方も大きな変化にさらされている状況ではないかと思います。
しかも、今回の変化は、1回の大きな変化というよりも、大きな変化が時々刻々と起こっていくような状況です。いろいろな要素が関連している上、さまざまな立場の人がそれぞれの立場での主張をするので、それらを読み解き、理解するのでも精一杯で、先を見通すなどできるのかと思うほどです。
シナリオプランニングは「より困難で、より不可欠」に

そういう中、『シグナル:未来学者が教える予測の技術』の著者であるAmy Webb氏が3月末にLinkedInに投稿した今の時期におけるシナリオプランニングの重要性を痛感しています。
Scenario planning just got harder—and more essential.(シナリオプランニングは、今やより困難になり—そしてより不可欠になっている。)という一文から始まる文章は、今の時期に私たちがシナリオプランニングに取り組む意義を的確に表している文章でした。
投稿では、関税などの話に始まり、それが企業やグローバルの産業に与える影響について触れていました。しかし、 Right now, I'm not seeing enough ELTs planning for contingencies.(現時点では、不測の事態に備えた計画を立てている経営幹部チーム(ELT)が十分に見られない。)とも言っています。
継続的で中核的な取り組みとしてのシナリオプランニング

そこからシナリオプランニングの話に入ります。少し長いですが引用し、試訳(やや意訳気味)をのせてみます。
In this world, scenario planning isn't something you do occasionally or without rigor. For those of you whose organizations engage in periodic foresight (think: once-a-year workshops at an offsite) the complexity of today's world demands much more. It needs to be a core capability, and planning should be continuous—either with an external partner or a dedicated internal team. (このような世界では、シナリオプランニングはたまにで、あるいは なおざりに行うようなものではありません。組織で定期的な未来洞察(例えば年に一度の社外ワークショップ)に取り組んでいる方々にとって、今日の複雑な世界情勢は、それ以上の取り組みが必要であることを意味しています。シナリオプランニングは中核的な能力とすることが不可欠で、また外部パートナー、あるいは専任の社内チームによって継続的に取り組むべきものです。)
拙著『実践 シナリオ・プランニング』では、シナリオテーマの時間軸の設定に関して、「長期で設定するのではなく、自分たちにとってどれくらい先が不確実なのかを考えて取り組むべき」という主旨のことを書きました(同書233〜234ページおよび238ページ)。
Amy Webbの投稿には時間軸の設定についての直接的なコメントはありませんが、年に一度では十分ではないという点なども踏まえると、昔ながらの「長期の時間軸だけで考え、作成後は1年、あるいは数年単位で見直す」というような悠長な取り組みでは不十分であると言えるでしょう。
「急ぎながら回れ」の時代に必要なシナリオプランニングの進め方

実際、現在弊社でご一緒しているお客さま、あるいはお問い合わせいただくお客さまは、こうした環境変化に対する柔軟な対応を考えるための「基盤」としてのシナリオプランニングのご相談を検討されています。
また、このような変化が激しく大きい時期には、弊社のように都度外部のメンバーと一緒にやるのではなく、Amy Webbの投稿にもあるとおり社内にシナリオプランニングチーム、あるいはシナリオプランニングをできるメンバーを抱えておく必要性を理解してくださるお客さまも増えてきました。
実際、継続的にシナリオプランニングに取り組んでいるお客さまは、上記のような状況もお伝えし、できる範囲でシナリオの見直しなどに取り組んでいらっしゃる企業もあります。
もちろん、どのような状況にあってもシナリオプランニングの基本的な部分は変わりませんが、十分に理解していないと応用的な取り組みもやりにくいことは確か。
変化が大きい最中に「急がば回れ」というようなことはあまり言っていられないかもしれませんが、「急ぎながら回れ」というような柔軟な対応をしていくことを検討してみてください。
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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。