シナリオプランニングでの組織資源のとらえ方【Stylish Ideaメールマガジン vol.278】

シナリオプランニングを使うかどうかに限らず、企業で新規事業などを考える際に欠かせないのが、自社が持っている組織資源です。

組織資源とは、簡単にいえば、その組織が持つ、人、物、金、情報といったもの。

この中でも誤解されやすいのが「情報」ですが、ここには日々の業務で生まれるデータだけではなく、その会社が持つノウハウなども含まれます。

組織資源について、もう少し詳しく知りたいという方は、過去のコラムもご覧ください。

・次の10年をつくるための組織資源の重要性【Stylish Ideaメールマガジン vol.177】

新しい事業を思いついたとしても、それを実現するために必要な組織資源、つまり人、物、金、情報(ノウハウ)がなければ、自社単独で、すぐに取り組むことはできません。

必要な組織資源がない場合は、時間をかけてその組織資源を内部に蓄積するか、その時間を短縮するために外部から購入するかを検討するのが一般的です。

このように組織資源は事業を実現する上で欠かせないものであるため、既存の組織資源を使うと何ができるか?という観点から新規事業を考えることがあります。

わかりやすいのは例えば次のような観点です。

「自社は、全国津々浦々に拠点を持っているので、その全国ネットワークを活用して何か新しい取り組みをできるのではないか…」

このような観点をきっかけとして、顧客のニーズや世の中の流れを検討し、自社としての新しい取り組みを考えるのが、組織資源を元にした新規事業の検討方法です。

このように既存の組織資源の活用先を検討するという流れで事業を考えるやり方は、シナリオプランニングで比較的長期の時間軸(例えば2040年)を前提としている場合にも応用することができます。

ただし、比較的長期の観点で事業案を考える場合の組織資源のとらえ方には注意が必要です。

どのような注意かというと、それは、既存の組織資源を当たり前のものと見なさず、改めてその必要性を考えるということ。

既存の組織資源を当たり前のものと見なさないというのは、検討した将来のシナリオを元にして、

「このような未来になったとしても、既存の組織資源は持っておくべきなのか?同じような価値を持つのだろうか?」

と考えるのです。

そのような観点を持ち込まずに、シナリオを元に事業案を考えてしまうと、例えば上に挙げた例であれば、
「自社には全国ネットワークがあるから…」ではなく、
「自社の全国ネットワークを2040年も維持するためには…」
という視点にこり固まってしまう可能性があります。

もちろん、既存の組織資源を維持すること自体を否定するわけではありません。

そうではなく、既存の組織資源の必要性自体を、不確実な変化の可能性を元にして見直した上で、改めて必要性を検討するのです。

しかし、これは実際にやってみると「言うは易く行うは難し」の典型。

そこで、いきなり必要性を検討するのではなく、

「そもそも、自社はどういう経緯(戦略 or 意図)で現在の組織資源を蓄積してきたのか?」

と問うことから始めてみると良いでしょう。

例えば、先ほどの全国ネットワークの例で言えば、

「そもそも、自社はどのような意図で全国に拠点を張り巡らせようと考え、それをどのような経緯で実行してきたのか?」

というような問いから考え始めてみるのです。

そうすると、現在の組織資源を築き上げるきっかけとなる外部環境の状態や想定していた変化の可能性等が明らかになってくるでしょう。

そして、そのような前提を元に戦略等を策定し、実行し、今に至るという一連の経緯が見えてくるはずです。

そのような前提、あるいは今に至るまでの一連の経緯を明らかにし、そこに検討した未来のシナリオを重ね合わせると、

「今回シナリオで検討した未来においても、その前提は当てはまるのか?」

ということを考えることができるでしょう。

そのように考えた上で、前提が変わり、既存の組織資源を維持することが最適ではないと判断できる場合、設定した時間軸(2040年等)に向けて、既存の組織資源の別の活用先を検討したり、新たな組織資源を蓄積することを検討するのです。

少々ややこしい話になってしまいましたが、これまでかかわってきた多くの企業で、「組織資源」の扱いの難しさを感じてきました。

長い時間をかけて蓄積されてきたものであり、組織にとっては「当たり前のもの」であるため、その前提自体に目を向けることが難しいのです。

シナリオプランニングを活用して環境変化を考えることは、今の組織を成り立たせている前提に目を向けることにもつながります。

シナリオプランニングを活用したからといって「当たり前のもの」を見直すのが容易になるとは限りませんが、適切なシナリオと問いがあれば、比較的、考えやすくなることもたしか。

シナリオプランニングの取り組みを、自社の組織資源を新たな観点からとらえ直すきっかけとしてみてください。

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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。