何が私たちにとって問題になるか考える【Stylish Ideaメールマガジン vol.212】
シナリオプランニングの意義を紹介すると、
「うちは、リサーチ会社と契約して、最新のトレンドは押さえているから大丈夫です」
という類の返事をされる方がいます。
もちろん、最新のトレンドを押さえることはとても大事なことではありますが、イコールシナリオプランニングは不要とは言い切れないと感じています。
その理由のひとつは、
- 出来合いのリサーチ結果を読むこと
- 自分たちで起こり得る未来を考えること
の差にあります。
ただし、今回はそれとは別の切り口で、なぜ、最新トレンドを追うだけでは不十分かを考えていきましょう。
別の切り口を考えるための入口として、私が気に入っている『パラダイムの魔力』に出てくる次の一節を引用します。
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トレンドを見ていても、ルールの変化はわからない。
『パラダイムの魔力』24ページ
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最新トレンドを押さえるということは、「今」何が起きているかを理解することです。
しかし、それだけでは「次に」何が起きるか、しかも、既存のルールを変えてしまうような大きな変化が起きるかは想定しにくいのです。
ここであえて「想定しにくい」と書きましたが、個人的には『パラダイムの魔力』にあるように、「わからない」とは言い切れないとは思います。
しかし、やはり最新トレンドを押さえるだけでは、ルールの変化、特に自社に影響を与えるような変化は見えにくいでしょう。
なぜなら、ひとつのトレンド、IoTやAIなどの技術の進化について押さえるだけでは次のような変化までは考えにくいからです。
- それによって社会はどう変化するのか?
- それによって経済はどう変化するのか?
- その変化に影響を与える法制度等の変化は?
仮に、技術の変化が引き起こす、このような構造的な変化にまで目を向けられたとしても、それが自社にどのような影響があるのかは、自社のハード面・ソフト面を把握していなければ分析は難しいでしょう。
そして、ここまで書いたような一連のことに取り組むのがシナリオプランニングです。
昨年、訳書が出版された『対話型組織開発』では、組織が抱える課題のうち「複雑で不確実性を伴い、多くのステークホルダーが関係」している「適応を要する課題」への対処の方法について次のように紹介しています。
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適応を要する課題に直面した場合、方向性の設定とは、問題を特定し、鍵となる質問を考え、関連する事項を整理することである。
『対話型組織開発』231ページ
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自社が影響を与えるのは、IoTやAIなどの最新技術の変化だけではありません。
技術も含めたさまざまな要素が複雑に関係して、私たちの組織や個人に影響を与えます。
しかも、その変化への対応を、自社だけで行うことができる企業はないでしょう。
先ほど紹介したように多くのステークホルダーに目を向けなければいけません。
そのような状況で、私たちが未来に向けて考えなければいけないのは、引用したように
「何が私たちにとって問題になるのか?」
ということです。
単に個々の最新トレンドだけを追うのではなく、取り巻く関係の複雑さを見極め、それらが引き起こす問題を特定することから始めていく。
ひとつのトレンドをきっかけとして、自分事にまで落とし込んでいくためにはシナリオプランニングのような統合的な手法を検討してみるのも良いでしょう。
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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。