【対談ダイジェスト】著者と編集者が語る「実践シナリオ・プランニング」
新刊『実践シナリオ・プランニング』発売記念!
著者である弊社代表新井宏征と、編集者である日本能率協会マネジメントセンター柏原里美さんが、執筆中、編集中に『実践 シナリオ・プランニング』について考えていたこと、感じたことなど語り合った対談が行われました。このページではそのダイジェスト版をお届けします!
なお、この対談は6月に毎週開催しています『実践 シナリオ・プランニング』出版記念対談イベント【シナリオプランニング × ??】の事前イベントとして開催しました。
このグラフィックレコーディングはアラワスの関 美穂子さんにお願いしました!
▼出版の経緯
編集者 柏原里美さん(以下、里美さん):この『実践シナリオ・プランニング』の本を作るきっかけが、共通の知人でもあるアクティブ・ブック・ダイアローグ協会の代表の竹内壮太郎さんからのご紹介です。その後に「シナリオプランニングの本書きたいです」とご連絡をいただいて企画書を拝見したのですが、実は私はシナリオプランニングというものに対して最初ちょっと懐疑的なイメージを持っていました。それはシナリオプランニングってご都合のよい未来とかビジョンに向かってひた走るためのツールというような過度に楽観的な人たちが使うもの、もしくは計画、計画みたいにがんじがらめにされるようなものかな、というイメージがあったんですね。私は楽観的でもないし計画も守れない方なのでちょっと無理なんじゃないかと思ったんですが。
でも企画書にある文言があって、これなら興味持ってやれそう、この方法を知りたいと思うようになりました。その言葉とは「不確実な時代においては将来の可能性を楽観的に自分にとって都合のよいように見るのでもなく、悲観的に見て不安に飲み込まれるのでもなく、健全な危機感をもって捉えた上で将来に対する備えを講じていくことが重要である。そのための手法がシナリオプランニングである」というものです。
そんな方法あるなら知りたいと思ったと同時に、そんなこと本当にあるの?と興味を惹かれて他の本も買って読んだりしました。さらに企画書は「この本の中ではシナリオプランニングを段階的に理解してしっかり実践できるようになるところまで落とし込みます」というところまで書いてあったので、だったらできそうな気がする、私ができそうだったらもしかしたら読者の皆様にとっても役に立つものが作れるかもしれないと思ったのがきっかけでした。
▼作って終わりでなく、使って感じてほしい
著者 新井宏征(以下、ヒロ):シナリオプランニングに興味持っている方はシナリオプランニングの他の本も読まれていると思います。私も最初は本から勉強し始めたのですが、本に載っているのと同じようなシナリオプランニングらしきものはできるんですが、これでいいのかなと。これ作ってどうするのかなみたいなところは常につきまとっていて、それを自分やお客様と一緒にシナリオを作りながら「こんな感じでシナリオランニングを勉強していくといい」というやり方を今回の本でご紹介しています。
日本能率協会さんのウェブサイトで目次を見ることができるんですが、これまでのシナリオプランニングの本にでているような作成ステップは第6章で書いています。全7章中第6章でやっとそこにいくんですね。そこまでは、なぜ第6章のシナリオを作るステップがこんなにいっぱいあるのか、このステップはどんな意味があるのかということの全体像を分かっていただけるような感じで、第6章に少しでも無理なく進んでいけるような内容にしています。実際には3段階で最後がっつりシナリオを作るというところまでいくんですが、実際に一読者としてその3段階を読んだ里見さんはいかがでしたか?
里美さん:そうですね。本当に最初の最初読んだときは まだ始まらないんだっていう感じでした(笑)。
でも読み込めば読み込むほど、前にこれをやっておいて良かったなっという気分にさせられると言うか。徐々にしっかり積み上げられていって、積み上がったからこそここに来れたと感じるので。一見するとまだたどり着かないと思うかもしれないんですが、使っていくうちに「なるほど、だからこんな風に3段階に分けて書いたんだな」というのが分かるんじゃないかなって。なんかスルメみたいな感じかもしれないです(笑)。
多分、この本が使ってもらうための本ということを意図したからこそ、こういう作りになったのかなと私は拝見していました。
ヒロ:そうですね、他のビジネス書、たとえばマーケティング本とかロジカルシンキング本を読むと、その内容を自分で使えるようになるのがゴールだと思うんですが、使うというのは2つの意味があって、一つはこれを読んで自分でシナリオプランニングを作るという意味なんですけども、もう一つはシナリオ自体を使うというところはすごく意識しています。
シナリオを買うというのは、シナリオプランニングの本やWebの記事を読んだ方、または研修を受けた方がよく目にするのが2軸で4つの世界が描かれている複数のシナリオを作るまでが「完成しました」「こんな未来が来るんですね」というゴールになってるようなものが多いという気がします。
でも実際に組織で使ってもらうことを念頭におくと、複数のシナリオ作ってこんな不確実な可能性があるんだなという事を作っていくのは大事なんですが、そうなったら自分たちはどうすんだろう、というのを組織のみんなで考えるところまでつなげないとシナリオプランニングの価値や成果を十分に発揮しきれないんじゃないかと思っています。
ですので、シナリオを作ることに関心がある方とか、自分で不確実な可能性を考えたい人にはこの本の中の第6章でつくり方を丁寧に解説しているんですが、その手前に既存の複数シナリオのサンプルが載っていますので、それを使って自分自身のキャリアを考えてみることを、シナリオを実践する第一ステップに実は位置づけています。
1000人の組織があったときに、シナリオを1000人で作るわけにはいかないので実際は多くても20~30人で作ります。ただ、残りの970人はその結果を知らなくていいのかというとそういうわけではなくて。残りの970人も30人が作ったシナリオを使っていくためにどんなやり方がいいのかを考えて、シナリオ使うということを解説しています。
里美さん:私もそこにはすごくあの熱い思いを感じて、作って終わりでないところは素敵だなと思いました。やっぱりこういうものは自己満足になりがちですよね、それを徹底的に避けようとしているところがデザインされていて本当に緻密だなあと。
ヒロ:私自身がシナリオプランニングを始めて、例えばどういうテーマの文言にするとみんなが考えやすくなってくれるだろうかとか、プロジェクトをやる上司に「そんなの考えてもしょうがないだろ」と言われないようにするにはどうしたらいいかなど、組織でシナリオをやろうとすると現実的に遭遇する場面を全部ひとつずつ、こうやって乗り越えていきましょうと自分自身がお客様と一緒に体験してきたことを全部入れています。
でもだんだん作り方を極めていくと、良いシナリオができた、という自己満足の世界に行ってしまって、これで組織が変わったのか?みたいな声がどこからともなく聞こえてきて。これを越えて行かなければならないし、使うときに970人にもこのシナリオの世界に入ってもらうためにはどうしたらいいかを考え出しました。それを考えるきっかけは最初にご紹介していただいた竹内壮太郎さんとご一緒したプロジェクトです。日本石材産業協会という業界団体でシナリオを作る取り組みをやったのですが、皆さん同じ業界だから集まっていて、大きな目的は一緒だけど個々の目的は実は細かく見ていくと意見が相反するみたいな感じがあって。そういう中で皆さんにそのシナリオ使って対応するためのプログラムの原型をその時試行錯誤しだしたのです。
▼未来創造ダイアローグ
里美さん:それが未来創造ダイアローグとして、この本の中でブラッシュアップして洗練されたものがたっぷり紹介されているということですね。
ヒロ:そうです。「戦略的対話」っていうキーワードがシナリオプランニングでは重要で、strategic conversationというんですが、それをいかに組織の中で起こしやすくするかということを念頭において作ったプログラムです。
シナリオプランニングというとなんかあの難しいやつでしょっていう感じになるんですけど、とりあえず未来のこと話しましょうよってなるとやだなという人はあまりいなくて。未来創造ダイアローグっていう手法を形にしたのがコロナのあとなので最初からオンラインでやることも想定していて、短くても3時間ぐらい時間があるとたっぷり未来創造ダイアローグの必要としているステップは取り組むことができます。そうするとみなさん仕事終わって18時からとか、午前中やろうか、水曜日やろうかみたいな感じで、そのシナリオプランニングの一番肝の部分をシナリオプランニングということを意識しなくても体験したり実践することができるプログラムにしています。
里美さん:私のいる会社でシナリオプランニングの手法で未来を語ってみた時に、みんな本当に未来のこと語るのかなって私心配していたんですけれど、ヒロさんにファシリテーターとして入ってもらって実際にやってみたら、すごく楽しそうに話し出すんですよね。こんなことがあるんじゃないか、そうすると私たちにこんな影響があるんじゃないかって。その時に感じたのが、普段現状維持で精一杯に見える方々も、本当は語りたいことや未来に対する思いがあるけども、ただ未来を語る場がないんだと思って。こういう場をつくっていくこと、それもしっかりプログラムされていて戦略的な会話が促されるような仕組みの場を使っていくと、組織で流れている会話の文脈が変わっていくんじゃないかという手応えを感じました。
ヒロ:みなさん熱く語っていましたね。組織に入るとその役割に課せられる責任や立場があってそれはそれで大事なんですが、不満があったときに、組織だからしょうがない、言ったってなにか変わるわけじゃないとなりがちです。そのときにシナリオプランニングができればいいけど時間も労力もかかるのでもう少しコンパクトにできるものはないかなと。未来創造ダイアローグだと将来のことの話なので素の自分の声が出やすくなると感じました。
▼シナリオ・プランニングの魅力とは?
里美さん:今回の新刊は440ページあります。内容がギュッと詰まった質の高いものを短期的に仕上げてくださったと思うんですが、これだけのものを作り上げるためヒロさんをドライブしたものはなんだったんでしょうか?
ヒロ:一つはタイミングで、コロナになってこの間にできることはなんだろうと。未来創造ダイアローグも今までポツポツと頭の中であったものをこのタイミングできっちり仕上げて形にしたのは、こういう時だからこそ将来について客観的に健全な危機感をもって語るのをいろんな方にやってもらうのは大事だなという思いです。また自分の棚卸しという感じではあるんですが、私の会社では企業でコンサルティングや研修、公開セミナーをやっているのですが過去受講していただいた方の質問を思い出しながら書きました。
里美さん:ヒロさんはシナリオプランニングのやり方も使い方も極めていらっしゃいますが、どこに魅力を感じていますか?
ヒロ:自分の素で話をすることを実現するための器としてシナリオプランニングはやりやすいなと。未来を考える手法は一通りみているですが、手放しに明るい未来だけを考える方法もあります。一方シナリオプランニングでは自分ではコントロールできないような外部環境要因を元にして作った4つの未来が出来ますが、そこで描かれる未来は自分ではどうしようもないけど、どれも起こりうる未来ですよね。じゃあこのときに自分はどうするのかと、何も制約なしに未来を考えるよりも前提や制約がある中でどうしますかと考えたほうがパワフルで、自分たちの根っこにあるものを覗きにいくということが起こりやすいと思っています。枠があることで安心感があり、それも自分の思考を制限されるような枠でもない。必ずしもワクワクした終わり方をするわけではなくモヤモヤして終わることもあるんですが、そこからじわじわその人の中で起こる変化も感じたりして。その人の中に変化が起きやすい仕組みになっていてそこがシナリオプランニングの面白いところですね。
里美さん:まさに内的な変容が起こるということですね。
ヒロ:初めはシナリオプランニングに乗り気じゃない方も、やってみるとポロッと本音が出てくることをこれまで何度も遭遇してきました。シナリオプランニングの複数の未来を見るということが絶妙で、どこになったとしても自分のやりたいことってなんだろう、など自分自身に問いかけだすと環境に左右されず本来なにがやりたいかを考えやすいと思いますね。
里美さん:根っこにあるものに自分自身が気づくというのも価値がありますし、組織の中で共有できることも大事だと思いました。
ヒロ:そうですね。普段は役職で呼び合っていて飲みに行ったりゴルフにいったりして〇〇さんてこういう感じなんだとなることもありますが、もっと組織の普段の状況に近いところでその人の考えが垣間見れる瞬間というのは本人にとってもまわりのメンバーにとっても大きな機会になりますね。
また未来はいろいろな可能性があるということが前提になると、その先のアウトプット、例えば今後の計画などが変わってきます。そういう意味でもシナリオを作って終わりでなく、次を見据えてシナリオを使うところまで行くのが理想です。
4章に未来創造ダイアローグとして使い方を紹介しているので、まずは体験してもらいたいです。そこで「自分でも作ってみたいな」という気持ちを育てていただいてから6章の作り方を見ていただくのも良いと思います。また弊社のホームページで「シナリオプランニング実践ガイドブック」も無料でお配りしていますので、(まずはガイドブックでザッと全体像を把握した上で、細かい)作り方が分からないことがあった時はこの本を見ていただけるとおおよそ網羅されていると思います。
里美さん:これだけ緻密にステップを踏んで考えていくと自分の思いに嘘がつけないと感じます。さらにそれを組織でやることで、自分一人ではそこに向かって踏み出せなかったとしても誰かと一緒ならできる、エネルギーを貰えるところも強みだと感じています。この1冊をきっかけに、命むき出しで楽しく輝いてしごとをしていく大人たちが増えていくと良いなと思います。
▼「実践シナリオ・プランニング」5/29発売!
新刊はアマゾンでも楽天でも購入できます。また6月には毎週色々なゲストをお招きして、シナリオプランニングとそのゲストを組み合わせるとどんな可能性があるかという対談をする予定ですのでぜひご参加ください。
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『実践 シナリオ・プランニング』出版記念対談イベント【シナリオプランニング × ??】
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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。