シナリオプランニングと実践コミュニティのつながり【Stylish Ideaメールマガジン vol.180】
コミュニティ、コミュニティと言いだしているけど、シナリオプランニングはやめるの?ということを言われることが何度かありました。
もちろん、シナリオプランニングをやめようとか、なんだかイヤになったというわけではありません。
むしろ、「組織で活用するための」と銘打ったシナリオプランニングを本格的に展開していくには実践コミュニティの考え方は必須だと考えています。
なぜでしょうか?
このメールマガジンなどで、何度も何度もお伝えしているとおり、シナリオプランニングで作成するシナリオは、アウトプットではなく、インプット。
つまり、シナリオを完成させて終わりではなく、完成させたシナリオを組織内で活用していくことが非常に重要です。
完成したシナリオを活用する取り組みの例には、
- 外部環境の変化の定点観測を行う
- シナリオを元にして作ったビジョンの浸透を行う
- シナリオを元にした事業計画等を作成する
- シナリオを元にした事業アイデアを形にする
- シナリオを元にした新たな組織資源蓄積のための取り組みを行う
といったようなものがあります。
※最後の組織資源についての詳細は、以前のメールマガジンも参照してください。
・次の10年をつくるための組織資源の重要性【Stylish Ideaメールマガジン vol.177】
https://www.stylishidea.co.jp/2018/07/25/newsletter-0177/
通常、シナリオプランニングの取り組みを組織内で行う場合、部門横断的なメンバーでシナリオの作成を行います。
最初は同じ社内といってもカタい雰囲気だった部門横断的なプロジェクトメンバーも、数ヶ月ほどのプロジェクト期間を経てシナリオが完成した頃には、未来に向かって新たな視点を持つ良いチームになっています。
このチームメンバーがそれぞれの持ち場に戻り、プロジェクトの成果を展開しようとした頃、初めて問題に気がつきます。
いつの間にか、不確実な未来に向けての影響を自分事として考えるようになっていた自分は、組織内では特殊な存在になっていたのです。
最初の頃は、どうにかしようと思うものの、いつしか元の鞘に戻ってしまい、そして今までどおりの日常に…。
となってしまうと、シナリオプランニングのプロジェクトに取り組んだ意味がありません。
しかし、実際問題として、プロジェクトで取り組んできたことを、通常の組織構造に持ち込むことは、そう簡単ではありません。
だからといって、最近話題の階層がない組織を目指すことは、長い目では理想かもしれませんが、多くの企業にとって「短期的な対応策」として現実的でないかもしれません。
そこで実践コミュニティです。
実践コミュニティについて体系的に論じている『コミュニティ・オブ・プラクティス』では、組織が学習していくためには、「二重編み」の組織を作る必要があると説きます。
『コミュニティ・オブ・プラクティス』 p.51
組織が自らの経験から学び、知識をフルに活用するためには、知識の世話人であるコミュニティと、知識が適用されるビジネスプロセスとを緊密に織り合わせ、いわば「二重編み」の組織を作り上げる必要がある。
同書のこの後の部分では、ひとりの社員が公式な組織(ビジネスプロセス)と非公式な組織(コミュニティ)に属している状態を
「多重成員性(マルチメンバーシップ」
と呼び、学習のループを生み出す特徴としています。
これをシナリオプランニングのプロジェクトに当てはめて考えてみましょう。
シナリオプランニングのプロジェクトは、通常、公式な組織を超えたメンバーとチームで実施をする方が効果的です。(その理由は改めて)
しかし、そのプロジェクトでどんなに良いシナリオができても、それをインプットとして導入していく仕組みがなければ、本来のシナリオプランニングとは言えません。
ただし、現実的にはプロジェクトの内容をそのまま公式な組織やビジネスプロセスに持ち込むのは無理がある。
そこで、実践コミュニティの仕組みを活用し、非公式な組織として、シナリオプランニング後の取り組みを組織のさまざなな文脈で実践します。
そして、実践コミュニティの活動を公式な組織に還元していくことをとおして、公式な組織自体にも影響を与えていく。
このようにシナリオプランニングと実践コミュニティの考え方を結びつけることで、公式の組織がどのようなものであったとしても、シナリオを活かす土壌を作りやすくなるのです。
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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。