シナリオプランニングとネガティブ・ケイパビリティ【Stylish Ideaメールマガジン vol.235】
新型コロナによる影響が長期化してきたことで、「コロナ疲れ」とも呼ばれるような現象をさまざまなところで目にします。
そのひとつが、今起きていることを過小評価したり、都合の良い枠組みで理解すること。
そのようになってしまうと、今の状況は大したことがないもので、早晩、「元の状態」に戻るだろうと考えてしまいます。
そのような考え方の態度と対極にあるのが「ネガティブ・ケイパビリティ」です。
ネガティブ・ケイパビリティについては、同名の著書『ネガティブ・ケイパビリティ』で紹介されていますが、下記の記事でも重要な部分を知ることができます。
この記事ではネガティブ・ケイパビリティは、
「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」
と定義されています。
私たちは、目の前にわからないものが現れると、それを自分の知っている枠組みや経験に当てはめ理解しようとしてしまうことがあります。
そうすると、既存の枠組みや経験と重なる部分は理解できるかもしれませんが、外れる部分は理解することができません。
そうなると、その対象を「理解したつもり」でいながら、実際には正しく理解できていない部分も残ったままの状態になっているのです。
この状態で済めばまだ良いのですが、この状態の理解をとおして、さらに別のものを理解しようとすると、ズレはどんどん広がります。
このような悪循環に陥らないためにも、ネガティブ・ケイパビリティを意識し、わからないものを一度わからないままにしておくという決断をすることも大切です。
先ほど紹介した記事では、こうも書かれています。
「ネガティヴ・ケイパビリティは諦めることを意味していません。いまは変えられないとしても、その不確実な状態に努力して耐え、希望を見いだしていく態度です。」
シナリオプランニングで将来における不確実な可能性を考えることは、これに似ています。
未来のことを現時点で「答え合わせ」する術はありません。
そのため、どんなに厳密なプロセスを経ても、完成したシナリオが「正しい」かどうかは誰にもわかりません。
だからといって、シナリオプランニングのプロセスが意味がないわけではありません。
ネガティブ・ケイパビリティについて書いた論文の著者は、
「この能力こそが対象の本質に深く迫る方法であり、相手を本当に思いやる共感に至る手立てだと。」
結論付けていたそうです。
シナリオプランニングも同じです。
シナリオを作成するプロセスをとおして、これから起きることの本質に深く迫り、何がわかっていて、何がわからないのかを明らかにします。
そして、わかっていることに冷静に対処し、わからないことについては観察を続けながら、起こり得る可能性を見極め、変化をした場合、それに柔軟に応じて動ける準備を整えておく。
ネガティブ・ケイパビリティをもって、個人として、組織としてそのような状態にまでたどり着くきっかけとして、シナリオプランニングに取り組んでみてはいかがでしょうか?
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単に複数シナリオをつくって終わりにしないためにも、プロジェクト等の設計時点からご相談いただくことをお薦めしています。